判例の重要ポイント


 試験に関係のありそうな重要判例を紹介します。定期的に増やしていきますので参考にしてください。


憲 法

(最高裁の違憲判決)

(1)尊属殺人(1973年4月4日)

 尊属殺人を重罰とする刑法200条を、憲法14条1項(法の下の平等)に違反し、無効とした判決。

 同規定は刑法を口語化した1995年4月の改正で削除された。

(2)薬局の距離制限(1975年4月30日)

 薬局開設の距離制限を定めた薬事法6条2項・4項は、憲法22条1項(職業選択の自由)に違反し、無効とした判決。同規定は1975年6月の改正で削除された。

(3)衆議院の定数配分規定(1976年4月14日)

 1972年12月の総選挙で一票の格差が最大4.99倍になった公職選挙法の定数配分規定(別表第一)は、憲法14条(法の下の平等)に違反し、選挙を違法とした判決。ただし、選挙を無効とはしない事情判決である。

(4)衆議院の定数配分規定(1985年7月17日)

 一票の格差が最大4.40倍になった1983年12月の総選挙をめぐり、(3)と同様の違憲判決である。ただし(3)同様に事情判決であった。

 国会は1986年5月、別表第一を改正し、議員定数を8増7減の512人とした。

(5)共有林の分離制限(1987年4月22日)

共有林の分割請求を制限した森林法186条は、不合理・不必要な規制で、憲法29条2項(公共の福祉に適合した財産権の規制)に違反し、無効とする判決。

 国会は1987年6月、同規定などを削除する改正を行った。

(6)玉ぐし料の公費支出(1997年4月2日)

 愛媛県が靖国神社への玉ぐし料を公費から支出したのは、宗教的活動にあたり、憲法20条3項(公的機関の宗教的活動の禁止)に違反するとした判決。また、憲法89条(公金の支出制限)にも違反するとした。

 判決は、元知事(故人)に、玉ぐし料として支出した16万6000円を県に返還するように命じた。

 

(重要判例)

・外国人の指紋押捺制度と憲法13条

争点:外国人の指紋押捺制度は憲法13条に違反するか。(最判平7.12.15)

事件:外国人登録法において義務づけられた指紋押捺を拒否した外国人宣教師が指紋押捺制度の違憲性を主張した事件。

関連条文: 13条

判例のポイント:・ 指紋押捺制度は、国民の私生活上の自由と密接な関連をもつ。

採取された指紋の利用方法次第では個人の私生活、プライバシーが侵害される危険性がある。

・ 個人の私生活上の自由の一つとして何人もみだりに指紋の押捺を強制されない自由を有する。

・ 国家権力が正当な理由もなく指紋の押捺を強制することは憲法13条の趣旨に反して許されず、右の自由の保障はわが国に在留する外国人にも等しく及ぶ。

・ 右の自由も公共の福祉のため必要がある場合には相当の制限を受けるところ、同制度は立法目的に合理的な理由が認められ、かつ、その必要性も肯定できるものである。

 (本判決の試験上での重要性)

 ・指紋押捺制度と憲法13条の関係について言及している点

 ・外国人に対する個人の私生活上の自由の保障が認められるとした点

・ 忠魂碑移設への公金支出と政教分離原則

事件:児童数の増加した小学校の拡張のため、地元の遺族会が管理する忠魂碑の敷地を小学校の用地に組み入れる目的で忠魂碑を移設・再建した。これに要した費用を地方自治体が公金から支出した。

争点:・忠魂碑の移設・再建のために公金を支出する行為は憲法20条3項で禁止される「宗教的活動に該当するか」

 ・遺族会は憲法20条1項後段にいう「宗教団体」、同89条にいう「宗教上の組織もしくは団体」に該当するか。

関連条文:20条、89条

判例のポイント:・ 忠魂碑の移設・再建は隣接する小学校が児童数の増加や校舎の老朽化によって校舎の建て替えが急務となり、これを実現するために行われたものであって、その目的は世俗的なものであり、その効果も特定の宗教を援助、助長、促進し、または他の宗教に圧迫、干渉を加えるようなものではないから、宗教的活動には当たらない。

・ 憲法20条1項後段にいう「宗教活動」、同89条にいう「宗教上の組織もしくは団体」とは、特定の宗教の信仰、礼拝または普及等の宗教的活動を行うことを本来の目的とする組織ないし団体をさす。

(本判例の試験上での重要性)

・ 宗教団体の定義を明確にした。

・ 忠魂碑訴訟のリーディングケースとなった判決。


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